

2023.12.10

2025.08.24 定期列車での4両運転

2026.02.05 22年ぶりの郡山駅

阿武隈急行 8100形
1988年7月1日、阿武隈急行線 槻木ー福島間 全線電化開業。
8100形は阿武隈急行の顔として、日本車輛にて9編成18両製造された。
2018年7月1日、新型車両である「AB900系」の導入が発表された。
2019年7月1日「AB-1」編成が運転を開始し、8100形は順次置き換えられた。
2026年7月末現在、8100形は「A-15」「A-17」編成の2本のみ所属している。
前面形状

流線型が基本となっていた国鉄車の面影を残しつつも、営団01系のような前面形状を取り入れた先進的で古さを感じないデザインとなっている。
国鉄713系電車が設計のベースとなっているのは周知の事実であるが、713系の車体構造は側面や寸法を参考にした程度であると思われ車両のデザインそのものは、完全なオリジナルとなっている。
高度経済成長期の鉄道車両は地方鉄道でも独自性が強いデザインが多く、当時の社会情勢が車両に色濃く反映されていると考えている。
ライトケースを見ると蝶番とカバーが設置されているが、これはメンテナンス性を向上させるために増設したものであり、落成当初カバーはなく更にライトケースの黄ばみもなく透明であった。

この写真はAM8100(福島側先頭車)を左右から撮った写真である。
見てのとおりだが、乗務員扉の位置が左右で異なる。これはワンマン運転時の乗降を確認しやすくするためであり、713系も同様の作りとなっている。そのことから国鉄713系が設計元であるということがわかる。
なお、東北地方の電車では乗務員扉が左右対称配置が標準のため、ひときわ異彩を放っている。
ワンマン運転時では目視確認を行う場合使用されるが、ミラーで乗降を確認し運転台脇のドアスイッチにてドア扱いすることもあるため、必ずしも使用されるわけでなはい。(多分)
内 装

8100形の車内はワンマン運転とは真逆の思想であろう、急行列車の車内を彷彿とさせるボックスシート。そして車端部と連結部には移動しやすいように、ラッシュ時間帯でも乗車定員を確保するためにロングシートとなっている。優先席は各車両進行方向運転台後ろに配置されており、モケットの色が変更されている。(落成当初はどうだったんだろうか)
車両連結部はT字型で貫通扉は設置されていない。現在では貫通扉のない貫通路は珍しく、落成時扉がなかった車両(仙台市地下鉄1000系など)でも後の改造にて貫通扉が増設されている他、新造車両では必ず扉を設置しなければならないため、とても貴重である。
なお、同時期に日本車輛で製造された遠州鉄道1000形にもT字型の貫通路となっている。
(AB900系でも車両連結部の貫通扉は解放状態で固定されている場合もある。)

座席の配置は昔ながらのボックスシートである。近年のJR東日本のボックスシートは樹脂製であるが、8100形の椅子は国鉄急行型の車両の面影を強く遺しており、キハ40系列や403系の座席に酷似している。(というか一緒なのでは)
なお画面右端に小さく見切れているが、719系と似ている灰皿用のネジ穴が残っており灰皿があったということがわかる。ここも急行型の面影を感じる一員となっているのではないのだろうか。
そして窓枠は金属製であるが、窓枠の下部分には何かで引っ掻いて落書きをされており個性的な落書きを見ることができる。(落書きしちゃダメだよ。)

先述の通り連結部は恐らく乗降のことを考慮してロングシートとなっている。車両連結部もロングシートとなっているため、ドア付近は空間が広く取られておりT字型の連結部と合わせて急行型の面影はなく通勤車両のような雰囲気がある。実際阿武隈急行線の朝夕時間帯は多くの学生利用客で賑わっているためこの広々としたドア付近の空間は有効に使われている。だが、仙台を18時半近くに発車する梁川行の直通列車は多くの乗客が乗っており、8100形4両で運転されていた。大抵の乗客が東北本線区間内で下車するのだが、前後2ドアの当車両は途中駅で降車するのが困難であったらしい。また、東北本線区間ではJRの運転士が担当するが電磁直通ブレーキの車両は2008年頃に引退をしており、扱いに慣れていない8100形よりもE721系と共通仕様であるAB900系の方が運用上都合がよいということもあったのであろう。早期に仙台直通列車の運用から外れたのはこれらが影響しているとされている。(冷静に考えて利用客が増えてる仙南区間によく来てたよね)


8100形
713系
なお、713系と大きく異なる点として、運転台後ろの仕切りが上げられる。713系は近郊線区やローカル線区での運用が前提として設計されているもののワンマン運転は当初は想定していなかったのだろうか、113系のようにしっかりと仕切りがある。なお、713系では仕切壁後ろ、左右に機器が搭載されており椅子が撤去されているが、ワンマン化工事前はロングシートとなっていた。
一方、8100形は製造時からワンマン運転が想定されていることから、仕切り板は運転台後ろのみに限られておりそれ以外は鉄パイプで仕切られており、開放的な印象となっている。なお、運賃箱は貫通扉前まで稼働しワンマン運転時は移動して使用される。また、ドアに関してもワンマン運転時に運賃収集及び乗降をスムーズに行えるようにするために運転席後ろギリギリまで寄せて配置されている。現在は前後共にドアボタンが搭載されているが、落成当初は車両後方のドアボタンは設置されておらず、手動で開閉を行う手法であった。その名残として車掌スイッチは「入」「切」の2つのみとなっている。その関係なのかは不明であるが、8100形の後方ドアは編成によって閉まり方の違いが見られ、大抵の場合は左右の動きが揃わない。ドアチャイムは東海地方でおなじみの音であり、日本車輌が製造したからなのか、はたまた後から増設されたものかは不明であるが、東北地方では珍しい物となっている。
(8100形のいい感じの写真がなかった...)
外 装

車両外装で一番目を引くのはやはり側面のストライプであろう。8100形の数年前に運転を開始した、かの有名な185系電車もストライプの塗装がトレンドマークであり、1983年から日本車輌にて製造されていた遠州鉄道1000形も赤い車体にストライプの線がまとわれている。
しかし、8100形はストライプだけではなく、それをつなぐようにラインが横に伸びており前面まで伸びているのが特徴である。ちなみに緑は沿線の自然、青は阿武隈川の流れる色を表しているそう。(阿武隈川は緑色だろというのは禁句)
なお8100形とそっくりなストライプデザインとして、三陸鉄道の36-100形があるが1両編成で完結するデザインであるため、当形式のデザインと関係があるのかは不明である。恐らくこの時代の鉄道車両のトレンドだったのであろう。

阿武隈急行線の運用は基本的に2両編成であるが、4両編成につながると側面のストライプが織りなす線形を拝むことができる。なお、阿武隈急行線が被災した際に8両編成での回送が行われたため、4つの山が最高記録である。
現在では4両編成の運用は消滅し、イベント時でも滅多に見ることができなくなった。
開業当初から続く阿武隈急行線から仙台駅までを直通する運用、通称「仙台直通」には4両編成の8100形が運用されていた。2023年3月ダイヤ改正まではすでに新型車(AB900系)が中心ではあったが、まれに仙台直通運用に充当されていた。2024年ダイヤ改正までは阿武隈急行線内完結の4両運転(梁川ー福島間での運用)が行われており、梁川駅で増結する様子をみることができた。
定期運用離脱後の団体専用列車としても「A-15」「A-17」編成がつながる、4両編成の運転は2026年3月7日に行われた「阿武隈急行 8100形 仙台〜郡山の旅」が最後となっており、現在「A-15」編成は車庫内で余生を過ごしている。
2026年9月現在の噂によると、「A-15」編成はすでに走行できない状態になっていると言われており、事実上「A-17」編成が唯一の走行可能な8100形となる。

内装でも軽く触れたが、当形式で一番目を引くであろう箇所はドア配置である。ワンマン時の乗降を考え進行方向前のドアは乗務員室後ろすぐに配置されており、両開きではなく片開きの仕様となっている。幅は1mと1人が降車する際に狭く感じないほどの空間がある。そして車両後方、連結部側のドアは一般的な両開きドアとなっており417系のようなステップ付きで低床ホームに対応させたものとなっている。
筆者の考えとして、車両前方のドアが1枚扉なのは無人駅にて運転士が乗車券類を確認する際に1人ずつ降車できるように、後方のドアは2枚扉で有人駅などの利用者が多い場合でも乗降がスムーズに行えるようにこの配置になったものと思われる。(2026年9月追記、8100形デビュー当初の鉄道ファンにも記載あり。)
1両の中でドアの枚数が違う鉄道車両というのは日本国内において、非常に珍しいものでありワンマン運転を合理的に突き詰めたスタイルであり、当時はまだ都市型ワンマンという思想が無かったため生まれたものと言えるだろう。
走行機器
走行機器の解説は基本的に鉄道ファンの雑誌やネット上のWikiを参照して記述している他、
一部個人的見解を含みます。そのため情報の正確性に難があることをご承知おきください。

・なぜサイリスタ位相制御なのか?
8100形といえば、サイリスタ位相制御。皆がそう言うがなぜこの車両はサイリスタ位相制御でなければならなかったのか。
簡単に説明すると、鉄道車両の電化方式として直流と交流の2つがある。阿武隈急行は私鉄初の交流電化路線であることから、当たり前だが交流電車が必要である。直流車両であれば抵抗制御やチョッパ制御、界磁制御を発展させた界磁添加励磁制御等があるが、交流電車の制御手法としては半導体を用いた位相制御が一般的であった。そのため交流電車の先駆けである新幹線や交流電気機関車からの技術を応用すればいいのである。
その技術こそがサイリスタという半導体素子を用いた連続位相制御であった。この手法は200系新幹線にも使用されており、この電車には200系新幹線の制御回路が使用されていると歌われているのであると私は考えている。
・VVVF制御とサイリスタ位相制御
さて、現代の鉄道車両の速度制御手法ではVVVFインバータという電圧と周波数を変幻自在に操り交流電力を生み出せる装置が使用されている。この手法では交流電力を出力することから、三相交流の誘導や同期電動機が使用される。
しかし、8100形は先述したサイリスタ位相制御である。仕組みとしては交流電力内にてサイリスタをオンにするタイミングを変更し、少しいびつな形の交流波形を作り出す。その後、直流に整流し理想的な電圧の直流電力を作り出す。
そのためVVVFとは違い直流の電気が出てくるので、直流電動機を用いる必要がある。そのため、主電動機には近年の電車では珍しい直流電動機を使用している。(とはいっても西日本の鉄道会社ではまだまだ多くみられる)
制御装置の型名は"MU-6-211"であり三菱電機製である。この制御装置も不思議であり、他の制御装置では4つのサイリスタが搭載され、4段制御となることが多いが当形式は3つのサイリスタを直列につないだ3段縦繋接続と記載がある。2段の制御手法を用いた車両は711系などがあるが、3段のサイリスタ導体で構成された制御装置は筆者が調べた限り当車両のみであった。最高速度100km/hの車両では十分と言えるが、独自仕様にする必要まであったのだろうか。現代では共通化が図られ少々過剰な機器構成となることもあるが、この形式では不必要なものは省くという思想によって独自仕様となっていったのだろう。知らんけど。
どうでもいいが、多くの文献を見ているとサイリスタ位相制御のことを「サイリスタ制御」とか「サイリスタ連続位相制御」などと表記されている場合もあるがどれも同じものを指しているものと思われる。詳しく書いているか大雑把に書いているかの違いしかない。
・なぜ直流電動機なのか
先述の通り、直流電動機を使用する必要がある8100形に搭載されているのは「MT61形」である。713系900番台に初搭載された直流直巻電動機または直流他励磁式電動機であり、数多くの国鉄末期からJR初期の車両、同時期製造の私鉄車両に使用されている。なお、こうした直流電動機はモーター内部に物理的に回転子と接しているブラシという部品があり、摩耗が激しいこととVVVFインバータ制御で使用できないことから近年では鉄道車両に用いられなくなった。
・MT61形ファミリー
ちなみに8100形で用いられている「MT61形」にはレパートリーがあるのをご存じだろうか。
同電動機が初搭載された713系900番台(のちに0番台に改番)のMT61形の仕様は1時間定格出力(以降定格と記載)150kwであり、端子電圧は550V(文献によっては500V)となっている。従来の直流電動機は抵抗制御車でのMMユニットで8個の電動機を制御することから端子電圧は375Vがメジャーであったが、交流電車ではサイリスタ素子による電圧制御が可能なため端子電圧が引き上げられた。その代わりに定格電流が引き下げられている。また、この電動機は他励磁式電動機であり、回転子と磁界部分の回路が独立した仕組みとなっている。そのため713系では界磁電流と整流子電流を別々に制御できるため、回生ブレーキが使用できている。この仕様を私は勝手にMT61形(他励磁式)と呼ぶことにした。
なお、同じサイリスタ位相制御かつMT61形を搭載している719系では端子電圧を400Vとして定格130kwにしたMT61形が使用されており、713系同様回生ブレーキを備えるため他励磁式である。
このほか、直流電車用としてのMT61形も存在しておりこちらの方が知名度としてははるかに上であろう。この電動機の一番の特徴は直巻電動機であり、回生ブレーキ専用の界磁回路を備えている点である。直巻電動機でありながらも、回生ブレーキのために限定的に他励磁式であると言える。また、代表的な搭載車両である205系や211系では加速時の制御は、車両の始動から全界磁までをカム軸式のスタンダートな抵抗制御(直並列組み合わせも)で行っているため、端子電圧は必然的に375Vにする必要があるため定格は120kwとなっている。この仕様を勝手にMT61形(半直巻)と呼ぶ。
しかし、交流電車には必ず他励磁式が用いられるかというとそういうわけでもなく、むしろ8100形の製造時期では直巻電動機を採用しているケースが多く、電気ブレーキは別途抵抗器を設置し発電ブレーキを行う車両が多いようだ。具体的には、JR北海道の721系の1~4次車、JR九州の811系、787系である。この電車はサイリスタ位相制御で製造されており、これら車両の電動機は713系仕様と同様の定格150kwであることから端子電圧は500Vであるとわかる。そして、これらの車両では回生ブレーキを使用せずに屋根上に抵抗器を設けて、減速時には発電ブレーキを使用している。そのため、純粋な直巻仕様のMT61形を使用している。(北海道名ではN-MT721形)この仕様を勝手にMT61形(直巻)と呼ぶ。
MT61形のバリエーション(月城調べ)
・唯一の仕様の「MT61形」
さて本題に入ろう。8100形では多くの文献を確認したがいずれも一時間定格出力が120kwと記載されており、これは端子電圧が375Vであることを意味する。そして、8100形は交流電車であり回生ブレーキを使用しないということから、おそらくMT61形(直巻)を使用しているものだと思われる。端子電圧375Vかつ純粋な直巻電動機仕様のMT61形は筆者が調べた限り8100形以外の採用例はないと思われる。なぜわざわざ端子電圧を下げて定格を120kwにしたのかは不明であるが、車両最高速度100km/h(路線は95km/h、現在は85km/h)かつ勾配が緩やかな阿武隈急行線では120kw以上の電動機は必要とされなかったのかもしれない。(そもそも端子電圧を上げる必要性が無かったのかも)
・なぜ8100形に電気ブレーキがないのか
多くの交流電車が抵抗器を増設し発電ブレーキを使用するのが一般的な中、なぜ発電ブレーキを増設しなかったのかについては、おそらく713系の設計と阿武隈急行線の路線そのものが影響しているものと思われる。713系は落成当初の仕様では屋根上にベンチレーターを装備しており、8100形もそれに合わせてベンチレーターが設置されている。その兼ね合いで屋根上に抵抗器を設置する余裕がなかったことが一つ。そして、阿武隈急行線内では95km/hまでしか速度を出さないうえ単線路線で54.9kmの路線では回生ブレーキを行っても使用する車両がいないため回生失効が頻発する懸念もあることから、搭載されなかったのではないのだろうか。そのため他列車に関係なく安定した制動を得るために下記の通りの制動仕様になったものと思われる。
話が少し脱線するが、元祖交流電車である711系は直巻き電動機のMT54形を使用しており8100形と同様電気ブレーキを持たないどころか、弱め界磁制御も使用していない。8100形はある意味711系を俊敏化した車両ともいえるのかもしれない。


・制動装置
お次は列車を止める、制動装置の紹介である。8100形はブレーキ弁の通り電磁直通ブレーキを常用ブレーキとして採用している。国鉄車や、私鉄の少し古い車両は大概この手法である。電磁直通ブレーキは落成当初でも新しい技術でもなく、電気指令式ブレーキが登場して数年経っていたことからある意味世代交代中の古い技術であった。
8100形の珍しい部分はここではなく、回生ブレーキを始めとした電気を使用する制動手段を持たないことである。設計元となった713系は回生ブレーキが搭載されたが、これは車両を導入した時に回生ブレーキの試験車両として導入された側面を持ち合わせていたことと、電動機の話で先述した問題によって搭載されていないものと思われる。
電気ブレーキが使用できないことを補うかのように、空気ブレーキは非常に強力である。

8100形に使用されている台車は、付随車、電動車共に両抱式踏面ブレーキである。制輪子を圧縮空気の力で車輪に当てて制動を得る極めて一般的な手法であるが、両方の台車で両抱式踏面ブレーキを採用しているのは珍しい点である。
そして、制輪子にはみんな大好き「鋳鉄(ちゅうてつ)制輪子」が使用されている。ここからは筆者の考察だが、BVEにて8100形を制作していた際に計算を行ったところ、摩擦係数が高速車両向けの指数を極めて一致していたことから、キハ85形などに使用されていた高速車両向け(もっぱら気動車特急に使用されいる)の特殊鋳鉄制輪子を使用しているものと思われる。その関係なのか、台車自体も電車よりも気動車特急の台車と似ている。
そのため、高速域からでも素早い減速が得られ空気ブレーキ単体でも非常に強力な制動を得られることができる。まれに東北地方では見られない豪快な突っ込みブレーキを行うこともあり、迫力は鋳鉄独特の音も相まって折り紙付きである。